アレクサンダーテクニーク

「手の甲に消しゴムを置いて練習しましょう」という昭和的な考え方について


こんにちは、川浪です。

僕の生徒さんから

「ピアノのレッスンに行ったら、手がバタつくことを指摘され、手の甲に消しゴムを置いて、それを落とさないように、と言われました」

という話を聞きました。

平成が終わり、令和が始まろうとしているのに、なんというか昭和な価値観ですね。。。笑

そういう教え方は、百害あって一利なしです。

今回は、

・昭和的な教え方がどんな弊害を招くのか
・そもそも手がバタつくのはなぜか
・一体どういう対策をすればいいのか

ということについて書きます。

目次

昭和的な教え方がどんな弊害を招くのか

今回の例では、ピアノを演奏している時に、手がバタつく、ということです。

ピアノに限らず、演奏している時に、思ったように身体がコントロールできない、ということは多々ありますね。

例えば、弦楽器でも管楽器でも、指がバタつく、ということはよくありますね。

他にも、演奏しているときに、身体がフラフラする、ということもあります。

それに対して「手の甲に消しゴムを置いて、落とさないようにする」というのは、バタついている部分を、動かさないようにする、という発想です。

しかし、身体がバタつくのは、そうなってしまう原因があるはずです。

原因を放置したまま、身体を動かさないようにしようとすると、無理やり身体を固めてしまうことになります。

そのような状態では、身体に負荷がかかり、結局、目指している演奏をすることは出来ません。

それどころか、痛みを感じたり、腱鞘炎などの故障を招く恐れもあります。

「消しゴムを置く」というのは極端としても、身体が上手くコントロールできていない時に、それを無理やり固定するという発想では、上手く対応できません。

まずは、身体が思うようにコントロールできない理由を考える必要があります。

そもそも手がバタつくのはなぜか

なぜ身体がうまくコントロール出来ないのか。

理由は、人それぞれ違いますし、個別に見ていく必要があるのですが、、、

今回の例では「必要な動きが足りていない」からでした。

詳しく説明します。

ピアノを演奏するためには、たくさんの動きが必要です。

特に重要なのは、指の動きです。

鍵盤に直接触れるのは、指先ですから、指の曲げ伸ばしは、絶対に必要です。

そんなこと当たり前じゃないか、と思われるかも知れませんが、意外なことに、この「指の曲げ伸ばし」が上手く行えていない方が、けっこういるんですね。

今回の方の場合も、演奏に必要な動きをしていないので、その他の部分で、それを補おうとしていました。

具体的には、手首、ひじ、肩の関節を必要以上に使ってしまい、結果的に手がバタついてしまうのです。

それを止めようとして「消しゴムを置く」と、

必要な動きが足りていない

それを別の動きで補う

補ったために起こる動きを止めようとする

という、なんだか泥沼な状態におちいってしまいます。

これでは、最初にお伝えしたとおり、上手く演奏できないだけでなく、痛みや故障の原因となってしまいます。

ちなみに、別のパターンとして、脱力が好きな方々は「とにかく脱力すればOK」と言います。

これも、同じで、本来必要な動きが足りていないのに、さらに脱力しようとして、上手くいくはずがありません。

一体どういう対策をすればいいのか

ここまで分かれば、対策は簡単です。

指が動いてないので、ちゃんと指を動かしてあげればいいだけです。

そのために必要なことは、指を動かす時に、どの筋肉を使っているのか、を明確にすることです。

指を動かす筋肉は、一体どこにあるでしょうか?

そんなこと考えたことがなかった、という方が大半だと思います。

考えてみても、手のひらかな、と思われる方が多いのですが、答えをお伝えすると、次の写真のとおりです。

親指を伸ばす筋肉

人差し指~小指を伸ばす筋肉

親指を曲げる筋肉

人差し指~小指を曲げる筋肉

見ての通り、手のひらにある筋肉も使っていますが、肘から先の前腕部の筋肉も使っていることが分かります。

実際、指を動かしながら、反対の手で前腕を触ってみると、そこの筋肉を使っていることが分かりますね。

レッスンでは、必要な動きと、それをするための筋肉を確認しながら、実際に上手く働いている状態を確認してもらいます。

今回の方の場合は、必要な指の動きを確認して、その動きを意識的に行ってもらうことで、自然と手のバタつきも収まりました。

まとめ

演奏している時に、上手く身体がコントロールできずに、思わぬ動きをしてしまう時は、それを無理に抑えようとするのではなく、まずは、なぜその動きが起こっているのか、その原因を考えてみて下さい。

もし、必要な動きが起こっておらず、それを補うために、その動きが起こっているのならば、まずは必要な動きを確認して、それを意識的に行ってみてください。