「背すじを伸ばす」のウソ
こんにちは、川浪です。
アレクサンダーテクニークのレッスンを受ける方で、背すじを伸ばしたい、とおっしゃる方は多いです。
それと同時に、背すじを伸ばすと疲れる、ともおっしゃられます。
疲れるのに、なぜ背すじを伸ばしたいのでしょうか。
背すじを伸ばすことは良いことだ、というのが、世間一般での常識になっています。
しかし、僕は「背すじは伸ばさなくていい」とはっきり言っています。
今回は、それについて書きたいと思います。
・そもそも背すじって何ですか?
背筋を伸ばすといいますが、背すじって一体何なのでしょうか。
辞書によると、
「背骨の外側のくぼんだ部分」
だそうです。
しかし、この説明もあいまいです。
くぼんだ部分とは、どこからどこまで?
くぼんだ部分を伸ばすとは?
なんだかよくわかりません。
ほとんどの方が、何だかよくわからず、漠然と、背中のあたりをピンと張るんだな、程度のイメージしかないでしょう。
イメージが漠然だと、身体の動きも漠然とします。
実際には、背筋を伸ばすと、脊椎のカーブを後ろに反らす方が多いです。
まっすぐにしているつもりが、後ろに反っているのです。
後ろに反ると、重心も後ろによるので、骨格で体重を支えることができません。
そのため、後ろにひっくり返らないために、筋肉で体を支える必要があります。
背すじを伸ばしている間は、ふだん姿勢維持に使わない筋肉を働かせ続けることになります。
だから、背すじを伸ばしたら疲れるのです。
疲れないように背すじを伸ばす、というのは身体の構造上、不可能です。
・そもそも直立姿勢は機能的か?
さらにいえば、「背すじを伸ばす」だけでなく、「気をつけ」の姿勢というのもあります。
「気をつけ」は「背すじ」以上に、意味不明です。
(一体、何に気をつけるのでしょうか?)
おそらく直立姿勢のことを指す、というのが共通認識でしょう。
しかし、この直立姿勢は、まったく機能的ではありません。
機能的でない、ということを言い換えると、動きにくい、ということです。
その証拠に、スポーツの世界を考えてみましょう。
どんな競技でも、直立姿勢の選手なんていません。
野球の外野手は直立しているでしょうか?
短距離走のスタートは、直立でしょうか?
ちょっと考えれば、直立姿勢が動きやすいはずがない、ということがわかると思います。
しかし、楽器指導では、背すじを伸ばしましょうとか、まっすぐ立ちましょうとか、そんな指導がまだまだ当たり前のようにはびこっています。
というわけで、背すじを伸ばす必要はないし、背すじを伸ばしても弊害しかない、とお伝えしているわけです。
では、どんな姿勢がいいのでしょうか?猫背でもいいのですか?という、疑問を持つ方もいらっしゃるかと思います。
これに対しては「姿勢はどうでもいい」とお答えしていますが、これについては、また次回以降書きたいと思います。
まずは、「背すじを伸ばすことは良いことだ」という考えを手放すことから始めてみてください。