楽器と身体の使い方の関係について
こんにちは、川浪です。
アレクサンダーテクニークのレッスンで伝えている重要な概念に、「全体を意識する」というものがあります。
身体が思い通りに動かないのは、意識に偏りがあるからです。
例えば、腕を動かす時に、手元にばかり意識が向いてしまっていると、腕全体が上手く使えず、手元だけでがんばってしまいます。
このように、意識に偏りがあると、身体は上手く動かせません
身体を効率良く使うためには、全体を意識する、ということが重要になります。
では、「全体」とは、どこから、どこまでを指すのでしょうか?
答えは、文字通り「全体」です。
自分の身体の隅々まで意識を向ければ十分、ではありません。
自分だけでなく、自分が扱う楽器、共演者や観客、ステージの空間、などなど、ありとあらゆるものに、意識が向いているのが理想の状態です。
意識を向ける範囲は、広ければ広いほどよいですが、いきなり宇宙全体に意識を向けましょう、というのは難しい話です。
レッスンでは、まず自分の身体を観察するというところから始めます。
次に、意識を向けるのは、楽器です。
楽器に意識を向けていない状態というのは、的を見ないで、的を狙うようなものです。
楽器演奏において、目的は、楽器を鳴らすことです。
体の動きは、あくまでも手段に過ぎません。
楽器の大きさや、形を無視して、よい演奏ができるわけがありません。
例えば、ヴァイオリンなどの弦楽器でよく見られるのが、弓の長さに意識を向けていない状態です。
その場合、腕を動かすのに必死で、弓の長さを十分に使い切れません。
ドラムやパーカッションでも、スティックやマレットの長さを無視して、一生懸命、腕で頑張っていることがよくあります。
弓やスティックに限った話ではありません。
楽器は様々な形をしていますが、理由もなく、その形になっているのではありません。
それぞれ、音を出すのに都合がよいから、その形状をとっているはずです。
ですから、楽器の大きさ、形、内部構造などに、意識を向けなければ、最適な体の動きはできません。
演奏時に「全体を意識する」という時に、ぜひ、楽器にも意識を向けてみてください。
勘のいい方なら、それだけで十分に演奏に変化が感じられると思います。