正中線で楽器を構えるの嘘
こんにちは、川浪です。
先日、私のレッスンを受講されているオーボエの方から「楽器を正中線で構えるように指導を受けた」という話を聞きました。
その方は、この指導を受けて、楽器が吹きやすくなったとおっしゃっていましたが、私自身はこの指導については、今ひとつ賛同できません。
今回は、これについて解説します。
目次
そもそも正中線とは
正中線を大辞林で調べると「生物体の前面・背面の中央を、頭頂から縦にまっすぐ通る線」とあります。
要するに、楽器を身体の正面で真っ直ぐ構えるといい、という趣旨のようです。
正中線という言葉は、武道なんかでよく使われる言葉ですね。
ですから「楽器は正中線で構える」なんて言われると、なんとなく説得力があるように感じます。
そして、この指導をした方は、オーボエに限らず、どんな楽器でも、これが重要だと説いていたそうです。
はたして「どんな楽器でも正中線で構える」のは正しいのでしょうか?
少し考えればすぐに分かることですが、そんなわけはありません。
そもそも正中線で構えられない
例えば、、、
フルートやバイオリンといった楽器は、そもそも左右非対称に構えます。
最初から正中線に構えるというのが不可能ですね。
身体の正面に構えられる楽器のほうが、少なそうです。
正中線に構えられる楽器なら、正中線に構えることがベストなのか?
身体の正面に構えられる楽器といえば、今回のオーボエや、クラリネット、トランペットなどでしょうか。
この楽器であれば、正中線で構えることがベストなのでしょうか。
もしそうなら、困った場面もあります。
例えば、マーチングをするのであれば、必ずしも身体の正面を向いて、演奏するわけではありません。
だとすれば、マーチングではベストパフォーマンスを諦めればならない、ということになってしまいますね。
「マーチングをしないから、私には関係ない」と思われる方もいるかもしれません。
しかし、よくよく考えてみると、世界の名奏者と呼ばれる方で、楽器を身体の正面で構えたままじっとしている人なんていません。
身体も楽器も、自由に動かしているのが分かるはずです。
身体を動かすことは、音楽表現に密接に関係しているからです。
表現として、じっとしている場合もあるでしょうが、ずっと動かないなんてことはありえません。
なぜ正中線で構えたら吹きやすくなったのか
では、なぜ今回のオーボエの方の場合「正中線で構える」を意識したら、楽器が吹きやすくなったのか。
理由は簡単で、この方の場合は、楽器をどのように構えるか、という意識がそもそも薄かったからです。
楽器を構える意識がないところに、とりあえず「正中線で構える」という意識が芽生えたため、多少楽器が吹きやすくなったのでしょう。
しかし、この意識を持ち続けると、どうなるでしょうか。
今度は、楽器を正中線で構えた状態で、身体を固めてしまう可能性が高いです。
私たちは、自由に演奏表現が出来るために、身体の使い方を学んでいるはずですが、このような指導では、逆に身体を固めてしまい、不自由になってしまうのです。
他にも「昔、楽器の先生に〇〇するように指導された」というのが、刷込みのようになり、身体を固めたり、余計な力を使ったり、という癖が身についてしまっている方がたくさんいます。
まとめ
「正中線で構える」みたいな指導をされると、武道みたいでかっこいいし、なんとなく説得力があるような感じがしますが、実態はただの思いつきである場合がほとんどです。
一瞬は効果を感じる場合もあるかもしれませんが、長期的に見たときに弊害になることも多いでしょう。
そして、楽器演奏の姿勢に関する指導は、思いつきの域を出ないものが、かなりたくさんあります。
そういった指導に惑わされないように、ぜひしっかりとした身体の使い方を学んでみてください。