理解しようとする気持ちが、習得の妨げになっていませんか?
こんにちは、川浪です。
こうやって、日々ブログを書いていますが、基本的には、レッスンで誰かにお伝えした内容を、文章にしています。
ただ難しいのは、身体の使い方って、人それぞれ違うので、具体的にこうすればいい、というのは、対面じゃないと、伝えられないんですね。
だから、文章では、具体的にどうこうというより、その背景の理論や、考え方を中心にお伝えしています。
ちなみに、僕は文章を書くの決して得意ではありません。
今でこそ、それなりに書いてはいますが、それでも日々、頭をひねりながら、文章を書いています。
世の中にはすらすらと文章が書ける人もいるようですが、うらやましい限りです。
話すのであれば、いくらでも話せるんですが。笑
そんなこんなで、日々苦悩しながら書いているのですが、読んでいてためになるという感想をいただくこともあるので、まぁやってる意味もあるのかな、と思います。
さて、前置きが長くなりましたが、今回は、先日、ある生徒さんにお話した内容を、ぜひブログに書いてください、というリクエストをいただきましたので、それについて書こうと思います。
ーー
僕は元々「自分には才能がなく、何においても、努力で克服してきた」という自己認識をもっていました。
話は、大学受験にさかのぼります。
僕は、高校3年生のころには、偏差値30くらいしかありませんでした。
それでも、なぜか大学は国立に行きたいという思いがあったので、高3の夏から一念発起し、国立大学を目指して勉強を始めました。
当然、模試の結果はF判定ばかり。
ひらたく言うと「考え直せ」という意味です。笑
センター試験のリサーチもF判定でしたが、二次試験直前まで死ぬ気で勉強して、見事、現役で国立大学に入学することができました。
それ以来、僕は才能がなくても、ちゃんとした道のりに沿って努力すれば、何でもできるんだと思うようになりました。
と、同時に、才能ではなく、ちゃんとした道のりを一歩一歩、歩んできたからこそ、それを人に教えることも上手にできるんだ、という自負がありました。
当然、今教えているアレクサンダーテクニークについても、同じようにとらえていたわけです。
そうして、アレクサンダーテクニークのレッスンを開始して、数年がたったころ、ドラムを練習している時に、ある変化が起きました。
なんだか分からないけど、今まで出来なかったことが、ふと出来るようになったのです。
この時、内心「やばい」と感じていることに気が付きました。
「今までは、自分でちゃんと理解して、いろんなことが出来るようになってきた。
だから、それを上手く人に教えることが出来る。
もし、理解せずに出来るようになってしまったら、教えることができないじゃないか。
これはヤバいぞ」
というのが、僕の内面で起きていたことでした。
つまり、自分で、自分に起こった良い変化を、制限しようとしていたのです。
でも、よくよく考えると、もったいない話ですよね。
その時点で、すでにレッスンをしていて、人に伝えられることはたくさんありました。
仮に、ちゃんと理解せずに、新しいことが出来るようになっても、少なくともこれまで教えてきたことは、これまで通り教えることが出来ます。
わざわざ自分に起こった良い変化を、抑える必要はありませんよね。
そのように考えを切り替えてから、僕自身の身体の使い方は、劇的に向上しましたし、今も変化を続けています。
最近は、アレクサンダーテクニークのレッスンを受けることは、ほとんどありませんが、レッスンを受けていた頃よりも、学びのスピードが上がりました。
結果的には、レッスンで伝えられることも、どんどん増え、僕の心配していたことは、全くムダだったとわかりました。
この話を、どんな文脈で生徒さんにお話したかというと、その生徒さんは、すでに意識を変えることで、身体の変化が起こせるようになっていました。
にも関わらず「意識を変える」といっても、はっきりとは分からない、と、いつも悩んでいました。
僕がレッスンでいう「意識を変えたら、身体が変わる」というのは、確かに再現性のあることです。
しかし、それは今までの感覚で捉えようとしても、捉えられるものではありません。
今まで経験したことがない新しい体験を、今までの感覚で捉えようとしても、うまくいかないのは明白ですよね。
だから、「はっきり分かりたい」と思うことは、その変化のさまたげになってしまう可能性があるのです。
僕がレッスンしてきた中で、アレクサンダーテクニークの習得が早い人は、身体の変化が起こった時に「何だかよくわからないけど、多分これでいいんだな」と納得できる方です。
そうすると、事後的に「はっきり分かる」感覚を身につけることができます。
新しい体験は、事後的にしか理解できません。
このことが腑に落ちれば、身体の変化は、どんどんスピードアップしていきます。
これは僕自身の体験からもそうですし、レッスンを受けている生徒さんを見ていても明らかです。
ただ、今回の話をきいて、すべての人が「よし、分かろうとしなくてもいいんだな」と思えばいい、というわけではありません。
最初に述べた通り、具体的にどうする、というのは、人によって違います。
「あなたは、もう少しちゃんと考えて、理解したほうがいいですよ」という方も、もちろんいます。笑
もしあなたが、理解しようとしすぎて、せっかく起こった変化を抑えているのであれば、その気持を少し手放してみてください。
自己診断するのが難しい、という方は、信頼のおける人に見てもらうのが一番ですね。
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